1人が本棚に入れています
本棚に追加
オレは懸賞が趣味で、親の雑誌についていた懸賞ハガキや、インターネットで見かけたアンケートをよくやっていた。
時たま何かが当たって、オレの家に届く。物はさまざまだ。
皿やコップ、箸、フォーク、花瓶、植木鉢、ぬいぐるみ…などなど。高価なものだと、某大型遊園地のペアチケット。
実用品とかもよく当たるので、オレは懸賞品をありがたく使わせてもらっていた。
……だが、そんなオレが今、懸賞品に対して困惑している。人生初だ。
どこの懸賞品かはもう覚えもない。ただ小さな段ボールに入っていたのは……。
――種。
しかもそれなりにデカい。卵だと言われても頷けるくらいに。
結論、この種は普通じゃない。
とりあえず結論が出たので、困惑を控えさせて好奇心を表に出した。まずは種の観察だ。
つついてみる。……反応なし。
叩いてみる。……反応なし。
転がしてみる……ために種を段ボールから机の上に出した時、俺は段ボールの底に紙束が入っていたことに気付いた。
「せ…説明書?」
その紙束の一番上には、『小生物(緑)の説明書』という簡素な字が記載されていた。
俺は種を机の上にそっと置き、その紙束をひっつかんだ。
「えぇっと…小生物は――」
一通り朗読してから、なんで朗読してるのかと気付いて、苦笑してしまった。
説明書は、本当に普通の説明書だった。ただしその中に出てくる大前提の『小生物』というのが、普通ではなかった。
どうやら土と水で飼えるようなので、オレは近所のスーパーに行って土を購入。部屋にはこないだ懸賞で当てた植木鉢があるし、ちょうどいいだろう。
部屋に戻って早速植木鉢に土を盛る。そしてその上に種を置いた。埋めるのかと思ったが、説明書には『置く』と表現されていたので、置いておいた。
説明書を見る限りはこれでいいらしい。今日はもうほっといて眠ればいいのか。
一応、ネットで小生物という言葉を検索してみたが、それらしい答えは出てこなかった。
あの種が朝になったらどうなっているか、少し楽しみだ。
別に変化ナシでも、結局は懸賞品だから…ということで片付くだろうし。
最初のコメントを投稿しよう!