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ガサゴソという音で目が覚めた。手探りで目覚まし時計を探り当てて見れば、まだ起きるには早い時間。
「豆腐屋なら…じゃなくて」
一瞬思考が訳の分からない方向に持って行かれたのを引き留めて、目をこする。
今日は休みだ。ついでに親も仕事に忙しいようで、部屋の外から声がしなかった。
そう考えて、オレは起き上がろうとする体勢でぴたりと固まる。……あ、この姿勢辛い、背中つる。
ばふっと布団に舞い戻り、今気付いた違和感を口に出す。
「親も誰もいないはずなのに、なんで物音がするんだ…?」
口にしたらしたで、背筋が寒くなった。泥棒ならともかく、強盗だったらどうしよう……とか色々考えてから「よし」と気合いを入れて布団から起き上がる。
《ガサガサ》
物音は机の上から聞こえる。…机の上?
「……はっ?」
《ガサゴソ…ガサッ》
机の上……正確には植木鉢の上に、小さな人影があった。その人影と目が合い、互いに固まった。
ちょっと待て、一旦落ち着いて現実を見よう。
植木鉢の上で何やら動き回っている何か。昨日植木鉢には懸賞品の種を置いていた。この二つから導き出される答えは……。
「説明書っ!」
解んなかったので説明書を手に取った。 説明書を読んだ結果、答えが導き出された。
「…えーっと、つまり…こいつが小生物?」
ジッ、とオレに見つめられたままのそいつは、最初に固まった状態でずっと植木鉢の上にいる。ちゃんと手足もあるし、目も耳も二つで、口も一つ。服も着ていて、オレみたいな人間と変わらない。
違うとすれば、大きさだ。植木鉢の上に普通に収まるサイズ、説明書によると十センチくらい……なんだろうな。
ひょいとそいつの首根っこをつまんで持ち上げれば、じたばたと暴れ出した。……和む。
そっと植木鉢の上に戻すと、そいつは土を掘って自分から土の中に埋まった。警戒されたか?
「そういえば…こいつの餌ってなんだったっけ…?」
確か朝昼晩あげるはずだったような気がする。説明書をぱらぱらとめくり、それが水だという答えに到達した。これって植物育てるのと大差ないな。
「そうだ、小さいジョウロが台所にあったよな…多分」
植木鉢にはしばらく変化が見られそうになかったから、オレは台所に行ってお目当てのジョウロを手に入れ、そのまま水道水を汲んで部屋に戻ってくる。
戻ってきても、植木鉢は一ミリも変化なしだった。
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