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ジョウロで植木鉢の土にまんべんなく水をかけていく。すると、もこもこと土が盛り上がってさっきの奴が現れた。どうやら水(飯?)に喜んでいるようで、ぴょんぴょんと飛び跳ねて全身で喜びを表現している。
ひとしきりはしゃいで落ち着いたのか、しばらくするとそいつは土の上に寝転がった。どうしたのかとそいつを見ていれば、すぅ……と寝息のような音が耳に入った。
「寝たのか……そういやよく眠るって書いてあったもんな……」
寝ている姿をまじまじと観察する。緑を基調とした長袖の服に同じく緑色のズボン。昔どこかで読んだ絵本か何かの妖精の様だった。実際、こいつはそれらしい大きさだし。
これ以上観察しても変わりなさそうなので、植木鉢を机の隅によけて、勉強を始める。教師も宿題なんて面倒くさいもの出さなくていいのに……。
「……ん?」
宿題が片付いた頃、植木鉢の上でうろうろするこいつが目に留まった。
別段何をする訳でもなく、何か知らんがただひたすらうろうろしていた。暇なのか?
「あ、そうだ。えーと……確かここら辺に……」
ふとあることを思いついたオレは、手探りで引き出しから目当ての物を探す。引き出しには色んな物が雑にしまわれているから、目的の物を見つけるのは容易ではない。
「お……これ、か?」
それっぽい物をグッと引っ張り出せば、その目的の物……スーパーボールがオレの手にあった。
ちなみにこれも懸賞品だ。
「これならサイズ的な問題もないだろ」
スーパーボールを植木鉢の隅に転がした。うろうろしていたそいつはいきなり現れた球体に驚いたのか、対角線上に離れてジッと球体を見つめる。
しばらくはそのままだったが、こいつは少しずつスーパーボールに近付いて行った。最初に触った時はすぐに逃げたが、またじりじりと近付いてそれに触る……を繰り返す。
途中で夕飯のために一度退場した。戻って来た頃には随分平気になったようで、最終的にはペタペタと触っては転がして、それなりに堪能しているようだ。
「気に入ったのか」
オレが眠る前に見た頃には、こいつはスーパーボールにくっついたまま眠っていた。その姿は、この間見たガチャガチャのストラップにそっくりで、ちょっと吹き出した。
明日は何を渡しておこう。こいつならちょっとした物でも楽しみそうだな、スーパーボールを気にいるくらいだし。
そんな事を考えながら眠った。
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