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学校には、無事遅刻せずに行けた。ただ、カーテンのことが割と気がかりで、いつもより気持ち早めに帰ってきた。
「ただいま」
部屋に入って真っ先に気付く。開いたカーテンの隙間から、太陽光が見事に植木鉢に降り注いでいること。
そしてオレは植木鉢の上に視線を向けた。
「……うぇ、あ、うわぁ!?」
植木鉢の上で、あいつが干からびていた。即席の皿には水が一滴も入っていない。
オレは慌ててカーテンを閉めて、ジョウロに水を汲みに走り、あいつに目一杯水をかける。
「すまん、大丈夫か……?」
乾ききった土とあいつは徐々に潤いを取り戻し、あいつの手がぴくりと動いた。
ひとまず生きていることが分かって安心する。
「場所を変えた方がいいかもな」
今日みたいなことがまた起きないよう、植木鉢の置き場を考えることにした。
もっとも、オレの部屋で直射日光がほぼ当たらないような場所なんて、そう何ヶ所もあるわけがない。
「ここでいいか?」
オレの寝床の近く。物陰になっていて直射日光はまず当たらない、植木鉢が置けるくらいのスペースは充分ある。
ほぼ決定したが念の為と思い、植木鉢を持ってあいつに見せてみた。
「ここだと今日みたいなことにはならないぞ」
あいつはといえば、また不機嫌になるかという俺の予想を上回り、日光に怯えることとなった。
それに関しては罪悪感があるし、いつかは日光に慣れさせるべきかとも思う。
「おーい」
植木鉢の縁をしっかと握り締めるあいつに呼びかけてみれば、あいつはオレの方を一瞬だけ見て、ぶんぶんと首を縦に振った。
直射日光がトラウマになったかもしれない。
「じゃあ、ここに置くからな」
植木鉢を出来るだけゆっくり床に下ろして、オレは肩をぐるりと回す。あ、バキッていった。
あいつは視点が低くなったのが新鮮なのか、キョロキョロと周りを見渡している。場所はほとんど変わっていないんだけどな。
「あ、でもそうか」
小さいあいつにとっては、ちょっとした場所移動もかなりの変化になるんだろうか。
けどまぁ、今日のように直射日光による危険にさらされないようになったんだから、そのくらいは勘弁してほしい。
「水、いるか?」
ジョウロを構えたら、あいつは期待するような目でオレ……いやジョウロを見つめていた。
……そら腹も減るよな、今日は大変だっただろうし。
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