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夜が重ねられて築かれる まだ掠れた音色が揺れた 振り返るその暇すらない 風が巡って影を運ぶ 雲が強く背中を押されて 泣いていた月が綻ぶ 微かな微笑みが浮かんだ 慰めに痛めつけられた心 優しさに傷つけられた命 柔らかな刃に撫でられて 逃げることすら出来ない 褪めていく世界の色だけ ただ通り過ぎて失われた 雨の予感は未だ遠い 乾いた瞳を見開いて 永く涙を探していた 深い水底に埋もれた 熱い雫を呼んでいた 人が閉ざされて作られる また掠れた鼓動が揺れた 見据えるその暇すらない 今がここにあるように 空がそこにあるように 目の前を見つめなければ 人は決して生きて行けない
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