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雨の影は飽和して消失する 雫の行方は何処とも知れぬ 空転した感情をもて余して 歯車を欠いた車輪は崩れる 彩なす理想はいずれも遠く 狂える思想はわずかに近い 去らばとその身を翻し 打ち捨てられた領域は 旅立つ者と残されし者 二つを繋ぐ唯一の記憶 命の音に耳を澄まして 心の傍らに刃を隠して 晒された己の本性から その有り様を俯瞰する 雨の色は減衰して固執する 時に同化し何処へと消える 見える窮状を他人事と笑い 視線を外した後悔に揺れた 奇しくもその人形は燃えて 燻る火種に涙が落とされる 嘆くまでの道程は宛もなく それでも人は夢に捕らわれ 足掻く為の決意は間もなく それ故に人は幻に埋もれて 失われていく刻に流される ただ終わりまでをひた走る 雨と後の靄に包まれる世界 見えぬものを追い求めていく
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