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雨に煙る夜更けの色 気怠い瞼を縫いとめて 知らぬ言葉の縁を巡る 重石にした湿気た風が 後ろ髪引く暗闇の只中で 嗄れた囁きは零れた 告げるほどの意味もない ざわめきは胸に響いて 心の内側を支配していく その弱さで涙が流れるのなら 誰ひとり止められないなら いつか意味となるのだろう だから今は溢れるままに 想いがずっと消えないように この掌だけは強く握りしめたまま 耳を澄ましていくほどに 周囲の音はその姿を変えて 目を凝らして見るほどに 辺りの景色はその装いを解く 生まれそして散る詩の奥底に 傷跡とその痛みは横たわる 明けに沈む数多の感情は 影ひとつたりとも残らず されどその時を知ればこそ 伝えられる言葉もある 陽に溶けた霧の行方を 深い思考の海に求めて 在らぬ言葉を探していく 閉じられた瞼の後に 潜めた呟きは流れた 告げるほどの意味もない
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