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暗い炎を夜に点した その瞳が痛まぬように この心が悟られぬように…… 月は雲の簪を刺して 凛と艶やかな微笑み 肌を透す冷たさを前に 語らずに注ぐ淡い許し 重ならずとも影は深い 触れる程に沈みゆくから 飾り立てた衣を纏いて ひと思いに拒絶した 後先など夢のまぼろし 虫の音は退いていく 雨の粒は奏でていく 命ひとつ想い揺れて 時知らず空に失せて 果てなき夜に点された 暗い炎は燃え上がる それは悲しみではない それは憎しみでもない 傍らに寄り添うような 淡く優しい心の灯火 人影を緩やかに染めて 生まれたその色彩が 命の欠片を暖めてゆく
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