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 願い淡く潰えていく  想い儚く失われゆく  心を聴いた時の中で  命の悲しみが燃えた  滲む夜を遠ざける夕陽  影がその闇を抱き眠る  風鳴りが今に囁く様に  西の光は程なく薄れた  群青が支配を強めていく  切り抜かれた半月が抗う  浮き上がる彼方の灯りが  果てのいつかを指し示す  泣いてそのひとつが揺れ  笑って記憶の欠片は消え  呼んでその冷たさに慣れ  見えて刹那の失望を知る  硝子を透かした闇の空に  望むような戯れは顕れず  忘れたもの全てを重ねて  震える体を夢に明け渡す    余る思いの消えない重さ  凍る痛みの溶けない弱さ  潜む気持ちだけ加速して  残る予感だけが反芻する  もう泣くことはない  ただ笑うこともない  もう悲しむことはない  けれど喜ぶこともない  漣ひとつ立つこともない  深い水底から明日を覗く        
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