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 天の帳は緩やかに    空の影は軽やかに  今この時に満ちる  停滞すら許さずに  戸惑いさえ忘れて    器の縁から溢れ出した    思いを置き去りにして  恙無く全てを塗り潰す  片手間の切なさが語る  綴る術など知らず  継ぎ接ぎの破片が呼ぶ  帰る形など持たず  誰もが羨む物語など  何一つ在りはしない  死への手向けの雫は  遠い記憶の中にある  雨がそれを望むなら  ただ強く打たれよう  確かな別れの言葉を  この心に刻み付けて  約束がそして嘲笑う  戯れ言に翻弄された  憐れな愚か者の群れ  苦しみの産声落ちる  嘆くような暇もない  彼等の影が繋がるように  軋む感情が滲まぬように  終わりをこの瞳で感じて  幾重にも幾重にも重ねて  面影の余韻を噛み締める  涙は要らない  声も要らない    空に送る想いの意味を  失わずにいられたなら  ずっと変わらないまま  きっと傍にあるだろう  だから涙なんて要らない  いつか自然に零れ落ちるまで        
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