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月日は流れ、大和と岬は小学3年生。 ただただ幸せだった二人は、日々の成長と共に、 悩み傷付く事を知る。 岬は悩んでいた。 いつも優しかった大和の、近頃の態度に異変を 感じて。 話しかけると一見普通であるものの、大和の方 からは、あまり寄って来ない。そんな気がして いた。 放課後は皆に混ざり一緒に遊んでいたのに、何 も言わず一人で先に帰ってしまう事が増えたのだ。 「大和、何で先帰った?」 「…べつに」 帰宅後に尋ねても、こんな調子で、 (オレがいやになったのかな) 人知れず傷付く岬。 顔も瞳も真ん丸で小柄な岬とは違い、背が高く 切れ長で男らしい瞳。なのにまるで女子みたい に後ろにくっついて、ニコニコと微笑んでいた のが大和の筈なのに、岬は大好きなその笑顔を 暫く見ていない。 そんな中、転校生がやって来た。 「真下(ました)(つばさ)。よろしく」 意志の強そうな瞳が印象的な、日焼けした活発 そうな男子に、カッコいいねと女子たちが囁き 合っている。 ふと翼と目が合った岬は、 (おー…かわいいのがいる) まさかそんな事を思われているとは露知らず。 休み時間になると、翼が早速名を尋ねた。 「ふーん、仲良くしよーなミサキ」 そしてニッコリと頭を撫でると、 「岬にさわんな」 いきなり威嚇する大和。 「…大和?」 一体どうしたのかと困惑する岬を横目に、翼は 動じる所か爽やかに笑うと言った。 「お前ヤマトっつーの?よろしくな」 翼の家は近所であったらしく、一緒に帰ろうと 誘われた岬と目が合った大和は、仕方なく無言 のまま後に続く。 駄菓子屋から公園へ。二人にとっては通い慣れ たコースだ。 翼は転勤族で、そんなに長くは居られないのだ と語ったが、一切口を開こうとしない大和に、 苛立ちの募っていた岬がつい言ってしまう。 「大和…何か怒ってんの?」 「べつに」 「ウソだ、怒ってんだろ?何で?何か文句あん の?俺何かした?最近の大和ヘンだ」 (ヤキモチだ) 不穏な空気を気にも留めず、内輪揉めなど見慣 れている翼は、冷静に見抜くと努めて明るく振 る舞った。 「岬、大和なんかほっといて俺と遊ぼー?」 「うるせーお前は岬としゃべんな、気安く呼ぶな」 「つまんない、帰る」 毎日笑って過ごして来た大和との時間は、一体 どこへ行ってしまったのか。 そして、どうしてまともに話してくれなくなっ たのか。 そんな思いに囚われながら、さっさと公園から 出て行く岬をただただ見送る大和。 「あーあ、岬帰っちゃったじゃん。お前が帰れ ばいいのにさぁ」 「うるせーな、転校してきたばっかのくせに、 なれなれしーんだよ!」 行き場のない激情。 大和が翼に飛びかかり、二人はそのまま取っ組 み合いとなった。
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