宝物

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嬉しかった。全然話したこともないのに、親友と同じクラスになったみたいな、そんな高揚感を覚えたこと。お前はきっと、知らないんだろうけど。 同じクラスになった以上、きっと話す機会が出てくる。 そう思ってわくわくしていた俺に、だけどお前は全然声を掛けてはくれなくて。あの狭い教室で、馬鹿みたいに目は合うのに、声は知らないまま。 俺から話しかけるのも癪で、変な意地張ってずっと待ってたことは、さすがに恥ずかしくて言えない。 結局そうやって、俺たちはなんの接点もないまま、卒業式の前日を迎えて。 クラス全員で最後にと催した、星座鑑賞会。 誰が言い出したのかなんて覚えていないけれど、星なんて1つも見えない曇天だったのは覚えてる。 みんなで、馬鹿だなって笑ったんだ。
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