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「俺どうしても気になって、聞いてみたんだ。その指輪、いつからですかって」
「失礼な人だな」
「怒られなかったし。むしろ笑ってた」
「次からは、やめましょうね」
榊が呆れてそう言えば、天城の口が尖る。
年下の榊に諭されたことが、面白くないのだ。
子供みたいに氷をつつく天城に、小さく息を吐いた榊が折れた。
「それで? 続き、聞きたいです」
「……70年も前だって。20代の頃に貰って、それからずっとしてんだって」
「そんなに長い間、綺麗なものなんですか?」
「磨いてるって言ってた。くれた本人は私を置いて10年前に亡くなったけど、だってさ」
天城の口ぶりからするに、沈むほど重い口調では語られなかったのだろう。そのお婆さんの温和な姿が目に浮かぶようだ。
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