傘便り

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「陸」 彼が陸の名を呼ぶのも。 「ん、……ふ」 冷たくなった唇が重なるのも。 「……好き」 本音を声に出せるのも。 激しい雨音が、全部隠してくれるから。 彼は何も言わず陸の手を握った。 どうかしばらく、雨が降り続きますように。 陸の願いは虚しく、 期待に目覚めた月曜の朝は快晴だった。
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