宝物

3/8
前へ
/77ページ
次へ
「あ、悪い」 きっかけは、廊下ですれ違ったこと。 漫画みたいに肩をぶつけて、反射的に振り返った先にいたのがお前だった。 いかにも委員長って感じの、黒髪眼鏡の地味な男。 入学して数ヶ月の頃だったとはいえ、半袖のカッターがやけにだぼだぼしていたこと、よく覚えてる。 それ以来俺は、よくお前と目が合うようになって。 最初は気にも留めていなかったのに、あまりに目が合うものだから、なんとなく見返したりもした。 俺がそうやって小さな仕返しをすると、決まってお前の目が揺らぐんだ。どうしようって、動揺するみたいに目を泳がせて、最後はふいっと顔が背けられる。 なんだか小動物を揶揄ってるみたいで、凄く面白かった。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加