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佳奈子の髪を撫でていた楓の手がピタリと止まった。
一瞬意味がわからず、ただ戸惑って佳奈子の後頭部を見下ろす。
佳奈子は動きを止めた楓の指に、自分の指を絡ませた。
「私、高校生の時に無理なダイエットしちゃってね。半年以上も生理止まったことあるんだ。それから今に至るまでひどい生理不順で、定期的に病院通ってるの」
「………………」
「何年か前の検査で、言われたんだ。卵巣機能不全で、排卵が正常に行われてないって。……全く可能性がない訳じゃないけど、ほぼ自然妊娠は無理だって言われたわ」
言葉を失う楓を、佳奈子はゆっくりと仰ぐ。
そうして少し寂しそうに微笑んだ。
「だから、大丈夫だから。……気にしないで」
その笑顔を見た楓は、たまらず佳奈子の手をギュッと握り返していた。
「…………佳奈子さん」
「ん?」
「それ、ホントの話?……俺を安心させようとしてるんじゃなくて?」
「まさか。いくらなんでもこんな嘘つかないわよ」
動揺する楓に反して、佳奈子は明るく笑う。
だがそんな診断を下された女性がどんな気持ちになるのか、男でまだ人生経験の少ない楓には図り知れないことだった。
「自業自得なんだけどね。……普通の人より妊娠する確率の低い私が、人並みの結婚なんか望んじゃいけなかったのかな……」
「………そんなことないよ!」
楓は思わずガバッと半身を起こした。
驚いた佳奈子は目を丸くして自分を見下ろす楓の顔を見上げた。
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