忘れる為のセックス-2

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佳奈子の髪を撫でていた楓の手がピタリと止まった。 一瞬意味がわからず、ただ戸惑って佳奈子の後頭部を見下ろす。 佳奈子は動きを止めた楓の指に、自分の指を絡ませた。 「私、高校生の時に無理なダイエットしちゃってね。半年以上も生理止まったことあるんだ。それから今に至るまでひどい生理不順で、定期的に病院通ってるの」 「………………」 「何年か前の検査で、言われたんだ。卵巣機能不全で、排卵が正常に行われてないって。……全く可能性がない訳じゃないけど、ほぼ自然妊娠は無理だって言われたわ」 言葉を失う楓を、佳奈子はゆっくりと仰ぐ。 そうして少し寂しそうに微笑んだ。 「だから、大丈夫だから。……気にしないで」 その笑顔を見た楓は、たまらず佳奈子の手をギュッと握り返していた。 「…………佳奈子さん」 「ん?」 「それ、ホントの話?……俺を安心させようとしてるんじゃなくて?」 「まさか。いくらなんでもこんな嘘つかないわよ」 動揺する楓に反して、佳奈子は明るく笑う。 だがそんな診断を下された女性がどんな気持ちになるのか、男でまだ人生経験の少ない楓には図り知れないことだった。 「自業自得なんだけどね。……普通の人より妊娠する確率の低い私が、人並みの結婚なんか望んじゃいけなかったのかな……」 「………そんなことないよ!」 楓は思わずガバッと半身を起こした。 驚いた佳奈子は目を丸くして自分を見下ろす楓の顔を見上げた。  
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