忘れる為のセックス-2

13/20
前へ
/20ページ
次へ
「終わったから帰れ…って、言うと思う?」 「………………」 「明日は休みだから、好きなだけいていいよ」 ようやく呼吸を整えた楓は、ゆっくりと佳奈子に向かって手を伸ばした。 熱を持った腕に抱き寄せられ、佳奈子は額に口付けられる。 目を閉じそれを受けた後、佳奈子は楓の胸に頬を擦り寄せた。 (………心臓の音……速い……) トクトクトク、と速いリズムが肌に伝い、それが何故か切なく佳奈子の耳に響いた。 「………ごめんね、楓」 唐突な謝罪の言葉に、楓は胸元の佳奈子のつむじを見下ろす。 「え?」 「………なんか、色々巻き込んじゃって。……色んなことに付き合わせちゃって」 「………………」 悄然とした佳奈子の声に、楓はクスッと笑みをこぼした。 「付き合ったのは、愚痴と酒だけだよ」 「……………え」 「一緒にいるのも、エッチしたのも、全部俺の意思だよ」 「………………」 佳奈子はのろのろと顔を上げる。 その瞳には微かな戸惑いの色が浮かんでいた。 楓はそっと佳奈子の髪を撫でる。 「俺こそごめん。……ゴムなくて、生でしちゃって」 「…………ううん」 「ホントに大丈夫?……中には出してないけど」 ふと不安になり尋ねると、佳奈子はしばらくの無言の後でコクリと小さく頷いた。 そして顔を伏せたまま、蚊の鳴くような小さな声で呟いた。 「…………私ね。……ほぼ自然妊娠はできない体なんだって」  
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

323人が本棚に入れています
本棚に追加