忘れる為のセックス-2

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「………………」 持っていたビールの缶を思わず落としそうになり、楓は慌ててそれをテーブルの上に置いた。 そうして改めて佳奈子の顔を見つめる。 目が合うと、佳奈子は小さく首を傾げた。 「ね?」 「……………」 (き……聞き間違いだろうか……) まるでトランプでもしない?みたいな軽い誘い方だったので、楓は一瞬幻聴かと疑ってしまった。 佳奈子のほうもさして恥じ入る風でもなく、素の感じで楓の返事を待っている。 (一本で酔ったか…。それとも疲れか……) 耳の穴を小指でほじりながら、楓は佳奈子に向き直った。 「………ごめん。よく聞き取れなかったんだけど」 「だから、エッチしよっかって」 「……………」 「楓?」 「…………エッチ……って……」 「セックスだけど」 どこまでも淡々と、佳奈子は言葉を重ねた。 幻聴でなかったことに驚き、楓はただただ絶句する。 「あれ、もしかして楓、童貞?」 「………っ、違うよっ!!」 名誉の為、そこは強く反論した。 何故か顔が、みるみる熱くなっていく。 「……あのねー、俺達、初対面なんだよ!?」 「うん。……でも、したくなっちゃったんだもん」 「し、したくなったって……」 「楓と、エッチしたくなったの」 キッパリと言うと、佳奈子は一転して淋しそうな顔になった。  
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