322人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「………………」
持っていたビールの缶を思わず落としそうになり、楓は慌ててそれをテーブルの上に置いた。
そうして改めて佳奈子の顔を見つめる。
目が合うと、佳奈子は小さく首を傾げた。
「ね?」
「……………」
(き……聞き間違いだろうか……)
まるでトランプでもしない?みたいな軽い誘い方だったので、楓は一瞬幻聴かと疑ってしまった。
佳奈子のほうもさして恥じ入る風でもなく、素の感じで楓の返事を待っている。
(一本で酔ったか…。それとも疲れか……)
耳の穴を小指でほじりながら、楓は佳奈子に向き直った。
「………ごめん。よく聞き取れなかったんだけど」
「だから、エッチしよっかって」
「……………」
「楓?」
「…………エッチ……って……」
「セックスだけど」
どこまでも淡々と、佳奈子は言葉を重ねた。
幻聴でなかったことに驚き、楓はただただ絶句する。
「あれ、もしかして楓、童貞?」
「………っ、違うよっ!!」
名誉の為、そこは強く反論した。
何故か顔が、みるみる熱くなっていく。
「……あのねー、俺達、初対面なんだよ!?」
「うん。……でも、したくなっちゃったんだもん」
「し、したくなったって……」
「楓と、エッチしたくなったの」
キッパリと言うと、佳奈子は一転して淋しそうな顔になった。
最初のコメントを投稿しよう!