3人が本棚に入れています
本棚に追加
外に出ると、強い日射しに目が眩む。部屋の中と外ではこんなにも違うものか。うだるような暑さのおかげで立っているだけで汗が垂れてくる。まだ外に出たばかりだけど、もう帰りたい。
挫けそうになる心をどうにか支え、錆び付いた階段をゆっくりと下る。間違って手すりにでも掴まってしまったら火傷してしまいそうだ。
アパート名が書かれた門をくぐり、道路に出る。さてと、どこへ行くかな。
「こんにちは」
反射的に声の方を振り向く。そこには白いワンピースに麦わら帽子を被った、僕と同じ二十代後半くらいだろうか、しかしどこか幼さの残る女性が笑顔で僕を見つめていた。笑った時にできるえくぼと、くりっとした睫毛がとても特徴的だった。
僕が挨拶を返す前に、彼女は続けてこう言った。
「私が無くした物を、一緒に探して貰えませんか?」
最初のコメントを投稿しよう!