第1章

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外に出ると、強い日射しに目が眩む。部屋の中と外ではこんなにも違うものか。うだるような暑さのおかげで立っているだけで汗が垂れてくる。まだ外に出たばかりだけど、もう帰りたい。 挫けそうになる心をどうにか支え、錆び付いた階段をゆっくりと下る。間違って手すりにでも掴まってしまったら火傷してしまいそうだ。 アパート名が書かれた門をくぐり、道路に出る。さてと、どこへ行くかな。 「こんにちは」 反射的に声の方を振り向く。そこには白いワンピースに麦わら帽子を被った、僕と同じ二十代後半くらいだろうか、しかしどこか幼さの残る女性が笑顔で僕を見つめていた。笑った時にできるえくぼと、くりっとした睫毛がとても特徴的だった。 僕が挨拶を返す前に、彼女は続けてこう言った。 「私が無くした物を、一緒に探して貰えませんか?」
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