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「無くした物?」
直ぐに断ればよかったものの、この女性のことも気になり僕は彼女の言葉を繰り返してしまった。
「そうです!……大切な物を探しているんです」
彼女はぶれることなく僕を真っ直ぐ見つめる。僕はそれに耐えられず、視線を落としてしまった。
熱をもったコンクリートを見て、僕は考える。
僕は夕方に戻れれば特に問題はない、片付けもその後で間に合うだろう。彼女はどうだろうか。大切な物を無くして、見知らぬ僕に声をかける始末だ。それだけ大切な物かもしれない。
少しだけ顔を上げるけど、まだ彼女のことは見つめ返せない。
「……夕方まででいいなら、手伝いますよ」
「本当ですか!?」
周りなんて気にしない性格なのか、彼女は嬉そうに大きな声を上げる。喜ぶ彼女に照れ、それを隠すように質問をする。
「……それで、どこを探すんですか?」
「えぇと……、最初は河原です」
少し考える素振りを見せてから彼女はそう答える。
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