第1章

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「無くした物?」 直ぐに断ればよかったものの、この女性のことも気になり僕は彼女の言葉を繰り返してしまった。 「そうです!……大切な物を探しているんです」 彼女はぶれることなく僕を真っ直ぐ見つめる。僕はそれに耐えられず、視線を落としてしまった。 熱をもったコンクリートを見て、僕は考える。 僕は夕方に戻れれば特に問題はない、片付けもその後で間に合うだろう。彼女はどうだろうか。大切な物を無くして、見知らぬ僕に声をかける始末だ。それだけ大切な物かもしれない。 少しだけ顔を上げるけど、まだ彼女のことは見つめ返せない。 「……夕方まででいいなら、手伝いますよ」 「本当ですか!?」 周りなんて気にしない性格なのか、彼女は嬉そうに大きな声を上げる。喜ぶ彼女に照れ、それを隠すように質問をする。 「……それで、どこを探すんですか?」 「えぇと……、最初は河原です」 少し考える素振りを見せてから彼女はそう答える。
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