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※※※※※※※
それから二人は楓の車で、近くの公園の駐車場へと移動した。
家の前で話をすることを佳奈子が嫌がったからだ。
「どーぞ」
近くにあった自販機で買ってきたペットボトルのお茶を、楓は助手席に座っている佳奈子に差し出した。
ハンカチを当て、グズグズと鼻を啜っていた佳奈子はのろのろとそれを受け取る。
「…………ありがと」
「ん」
楓はにこっと笑い、運転席のドアを閉めた。
陽はすっかり沈んでしまい、辺りは宵闇の独特な薄暗さに沈んでいる。
そんな中でも、以前に会った時より佳奈子が随分と面やつれしていることに楓は気が付いた。
「………………」
佳奈子がお茶を一口喉に流し込み、ホッと一息ついたのを見てから楓はおもむろに佳奈子に向き直った。
「ちょっとは落ち着いた?」
「………………」
ペットボトルの蓋を閉めながら、佳奈子は小さくコクリと頷く。
そのまま佳奈子が自分から話してくれるのではないかと思ったが、佳奈子は強張った表情で口を閉ざしたままだった。
迷った末に埒があかないので、楓はためらいがちに口を開いた。
「もしかして、例の男から連絡があったとか…?」
「…………え?」
楓の言葉に、佳奈子はぼんやりとした視線を返した。
もしかしたら佳奈子を裏切ったという男が性懲りもなく佳奈子に何かを言ってきたのかと思ったが、この反応を見るとどうやら違ったらしい。
「違うの?……じゃあ一体……」
「………………」
怪訝そうに楓が呟くと、佳奈子の顔がみるみるうちに青ざめ始めた。
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