予想以上の逆風

4/34
238人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
以前、家を訪れた時に会った佳奈子の母親の顔が、楓の脳裏をふと過ぎった。 佳奈子と面差しのよく似た、少し気の強そうな……。 「………それで、いいのかな」 「え?」 「ご両親、がっかりなさるんじゃないかな」 しばらく考え込んだあと、楓はポツリと呟いた。 佳奈子は思わず言葉に詰まる。 「親ってさ、娘が産まれた瞬間に、嫁に行く時のこと考えてしまうって言うよね?」 「……………」 「佳奈子さんの花嫁姿見るの、楽しみにしてるんじゃないかなぁ……」 両親の顔が頭に浮かび、佳奈子はきつく唇を噛み締めた。 膝の上でギュッと両拳を握りしめる。 「………でも、しょうがないじゃない。……生活していくには、何かを犠牲にしなきゃいけないんだから」 「…………」 「住む場所も、子供にかかるお金も削れないんだから、結婚式諦めるしかないじゃない」 睨むように鋭い目になった佳奈子を見て、楓はそっと苦笑した。 強く握りしめている佳奈子の手を、優しく包み込む。 「まぁそれは、後にしようか。最悪、写真だけって手もあるし」 「……………」 「何よりまず、お互いの親に話すことが先決かな」 少し物憂げな顔をした楓を見つめ、佳奈子は小さく頷いた。  
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!