221人が本棚に入れています
本棚に追加
部屋に戻った佳奈子は、まずベッドに腰を下ろした。
無意識に口からは溜め息が零れる。
服の上からそっとお腹を押さえたその時、バッグの中のスマホが着信のメロディーを奏で始めた。
(…………楓?)
後でメールか電話をすると言っていたが、それにしては早い気がする。
訝しく思いながらスマホを取り出した佳奈子は、思わず息を飲んだ。
「………………」
画面には、数字の羅列だけで名前は出ていない。
それは登録されていない番号だということ。
そして記憶の片隅に残っていたその番号は、泉の携帯番号だった。
別れた次の日に、削除したデータ。
もうかけることも、かかってくることもないと思っていたのに……。
じっと画面を見つめたまま、佳奈子は身動きすることすら出来なかった。
しばらくして、電話は留守電へと切り替わる。
泉は伝言を吹き込むことなく、電話を切ったようだった。
ホッとした佳奈子は、慌てて今の番号の着信拒否設定を行おうとした。
だがその最中に、一通のメールが届いた。
………泉からのメールだった。
《 さっき言ったことは本気だから。近々、ゆっくり二人で話がしたい》
最初のコメントを投稿しよう!