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夕食を一緒にとる予定だったが、佳奈子の体調を慮って、その日は真っ直ぐ家に帰ることとなった。
医師の話によると、一過性のストレスが原因の腹痛だろう、とのことで。
まだ安定期に入っていないため、絶対安静を言い渡されたのだ。
「………色々ありがと、楓」
車で家まで送ってくれた楓に、佳奈子は助手席でペコリと頭を下げた。
楓は笑って首を横に振る。
「ううん。大丈夫だよ」
「ホントになんか……色々。……ごめんなさい」
心配をかけたこと、仕事の邪魔をしたこと、支払いの手続きまでさせてしまったこと。
………そして、泉のこと。
本当にただ申し訳なくて、佳奈子は悄然と謝った。
「体調が悪くなったんだから、仕方ないよ」
「…………ん」
「とにかく今は何も考えないで、安静にすることだけ考えて」
楓は佳奈子の頭に手を乗せ、よしよしをするように頭を優しく撫でた。
下唇を噛み、佳奈子は楓の顔をゆっくりと見上げる。
「……………」
目が合ったその時、何故か楓の瞳が大きく揺らいだ。
切なさの滲むその瞳を見て、佳奈子はハッと息を飲む。
次の瞬間。
楓の顔が近付いてきたかと思うと、静かに唇を重ねられた。
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