理想と現実

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※※※※※※※ 「でさー、嫌味ったらしく言うのよ。新婚旅行で国内なんて有り得ないーって」 腹立ち紛れに、佳奈子は目の前のシフォンケーキにフォークを突き立てた。 楓と籍を入れてから初めての土曜日。 この日佳奈子は、高校グループでも一番仲のいい早織とファミレスでランチをしていた。 同じグループにいる為、早織は佳奈子と理香の確執をよく知っている。 佳奈子の愚痴を聞きながら、早織は苦笑混じりに小首を傾げた。 「相変わらずだね、理香は」 「そうなの。先に結婚したことで満足したのかと思ったら、全然そんなことないし」 紙ナプキンで口を拭きながら、佳奈子は止まらない愚痴を吐き出す。 早織はおっとりと、カップに口を付けた。 「………でも意外だった。慎重な佳奈子が、出会って間もない人とデキ婚するなんて」 「ん。私自身、びっくりだよ」 肩をすくめる佳奈子に、早織は複雑そうな微笑を見せた。 「────泉さんのことがあったから、自棄になったんじゃないかって心配だったんだけど。今日、佳奈子の顔見て安心した」 「……………」 「すっごく幸せそう」 そこでようやく、早織は安堵したような表情になった。  
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