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哀しみさえこもったような呟きに、佳奈子の心臓がドキッと大きく弾んだ。
口を噤み、膝の上で静かに拳を握る。
(もしかして……早織、やっぱり……)
大切な親友の儚げな笑顔を見ながら、佳奈子の胸に何とも言えない思いが広がった。
早織が学生時代から付き合っていた男性と結婚したのは、2年半前。
子供は考えてるの?と一度だけ新婚時代に尋ねたことがあったが、そのうちね、と早織は明るく答えていた。
それから月日は流れ、何となく気にはなっていたが、まだ25才と若くまだ二人で過ごしたいのかも知れないと思い、その話題には今まであまり触れてこなかった。
………無意識に、聞いてはいけないこと、と自分にブレーキをかけていたのかもしれない。
「………あ、あの、さ」
「ん?」
「もしかして、早織……」
それ以上言葉が続かずに押し黙ると、早織は微笑みながらカチャリとカップをソーサーに置いた。
「実はね。一年前から私、不妊治療してるの」
「……………」
唐突な告白に、佳奈子は動揺して瞳を揺らめかせた。
だがそれに反して、早織は明るい声を出した。
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