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「やだ。そんな顔しないでよ。今日はおめでたい報告聞きにきたんだから」
「…………でも」
「いいの、ホントに。こっちこそゴメン。……ちょっと、羨ましくて」
へへ、と早織はバツが悪そうに首をすくめる。
ごめんなさい、と謝るのもおかしい気がして、佳奈子はただ早織から目を逸らして俯くしかなかった。
「確かに今は大変かもしれないけど、結婚したらいずれは子供、欲しいでしょ? それが先に出来たってだけで、宝物を授かったことには違いないんだからさ」
「……………ん」
「生まれたら、すっごく可愛いよ、絶対」
伏せていた目を上げると、早織はニコッと屈託なく笑った。
少し考えればわかりそうな事情を慮れず、デキ婚の愚痴を早織に言ってしまったことを佳奈子は激しく後悔した。
「………大変、なの?……治療って」
重々しく尋ねると、早織はう~ん、と言って首を捻った。
「実はね、旦那も私も検査したんだけど、どっちも大きな問題はないの。……ただ、少し私の卵管がつまってるって診断されて、それもこの前処置してもらって」
「……………」
「今はタイミング法で、様子見ってところかな」
佳奈子の塞ぎ込んだ様を見て、しまったと思ったのか、早織は努めて明るい口調でそう答えた。
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