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声のした方を振り返ると、佳奈子の隣に若い女性が座っていた。
目が合うと、女性はニコッと笑顔を見せた。
「これ、下に落ちてたんですけど。あなたのじゃないですか?」
「え?」
女性が何かを差し出したので、佳奈子は誘われるように下に目を向けた。
女性の手には小さなハンドタオルが握られていたが、佳奈子には見覚えのないものだった。
「……いえ、違います」
手を横に振ると、女性はあら、といって首を小さく傾げた。
「そうですか。じゃあ、後で受付に預けます」
「……………はい」
佳奈子が躊躇いがちに頷くと、またも女性は親しげな笑みを浮かべた。
佳奈子と同い年ぐらいか、少し年上か。
緩く巻いた髪のせいか、ふんわりと優しげな印象の女性だった。
「今、何ヵ月なんですか?」
ついでのように話しかけられ、佳奈子は膝の上の雑誌をパタンと閉じた。
そっと服の上からお腹を押さえる。
「今、2ヶ月ちょっとです」
「あら」
その瞬間、女性は嬉しそうに顔の前で手を合わせた。
「うちと同じ」
「え、ホントですか?」
「ええ。何人目のお子さん?」
「一人目です」
「わあっ、それも同じ」
思わずのように女性は甲高い声を上げ、慌てて周りを見渡しながら口元を押さえた。
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