対峙

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「やだ、ごめんなさい。興奮してつい大声出しちゃった」 ペロッと舌を出した仕草が何とも可愛らしくて、佳奈子は思わず笑いを誘われた。 「一人目の妊娠で、色々心細かったの。でも何だか年も近そうだし、子供も同じぐらいだし、何だか勝手に親近感覚えちゃって」 「………ホントですね。凄い偶然」 「あ、初めまして。私、高橋 麻里っていいます」 人見知りの佳奈子と違って根っからの明るい性格らしく、麻里はそう言ってペコン、と頭を下げた。 佳奈子もつられて頭を下げる。 「藤原……じゃなかった、朝日奈 佳奈子です」 短く名乗った後に顔を上げると、麻里は人懐っこくニッコリと微笑んだ。 聞くと、麻里は佳奈子より二つ年上の27才らしい。 年が近く、境遇も近いことから、初対面と思えないほど二人の会話は弾んだ。 「朝日奈 佳奈子さーん。診察室へどうぞー」 気が付くと、随分長いこと麻里と話し込んでいたらしい。 看護師の呼ぶ声に、佳奈子はハッとした。 「それじゃあ、お先に」 「はーい。また後で」 立ち上がった佳奈子に、麻里はヒラヒラと手を振る。 手を振り返し、佳奈子は踵を返して診察室へ足を向けた。  
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