222人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「やだ、ごめんなさい。興奮してつい大声出しちゃった」
ペロッと舌を出した仕草が何とも可愛らしくて、佳奈子は思わず笑いを誘われた。
「一人目の妊娠で、色々心細かったの。でも何だか年も近そうだし、子供も同じぐらいだし、何だか勝手に親近感覚えちゃって」
「………ホントですね。凄い偶然」
「あ、初めまして。私、高橋 麻里っていいます」
人見知りの佳奈子と違って根っからの明るい性格らしく、麻里はそう言ってペコン、と頭を下げた。
佳奈子もつられて頭を下げる。
「藤原……じゃなかった、朝日奈 佳奈子です」
短く名乗った後に顔を上げると、麻里は人懐っこくニッコリと微笑んだ。
聞くと、麻里は佳奈子より二つ年上の27才らしい。
年が近く、境遇も近いことから、初対面と思えないほど二人の会話は弾んだ。
「朝日奈 佳奈子さーん。診察室へどうぞー」
気が付くと、随分長いこと麻里と話し込んでいたらしい。
看護師の呼ぶ声に、佳奈子はハッとした。
「それじゃあ、お先に」
「はーい。また後で」
立ち上がった佳奈子に、麻里はヒラヒラと手を振る。
手を振り返し、佳奈子は踵を返して診察室へ足を向けた。
最初のコメントを投稿しよう!