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「順調ですね」
内診を終え、椅子に座った佳奈子に担当医師の足立は笑顔で向き直った。
エコー写真を佳奈子に差し出す。
「ほら、ちゃんと人の形になってきたでしょう?」
「………………」
言われて、佳奈子はゆっくりと頷いた。
今までもらったエコー写真の赤ちゃんはハッキリ言ってただの丸い塊にしか見えなかったのだが、今回はちゃんと頭や胴体などの形がわかる。
(ちゃんと……ちゃんと育ってるんだ……)
感動で言葉にならず、佳奈子はそっと守るようにお腹を押さえた。
その後、色々な注意事項を聞いたのち、今回の診察は終了した。
(これ見せたら、楓喜ぶだろうなぁ……)
嬉しくて、思わず佳奈子はエコー写真を見つめながら診察室を出た。
これを見せた時の楓の反応を想像し、ついつい口元が綻ぶ。
「朝日奈さん」
その時、待ち合いの端のほうから自分を呼ぶ声が聞こえ、佳奈子はハッと写真から顔を上げた。
見ると、先程と同じ場所で麻里がこちらに向かって手を振っていた。
佳奈子は慌ててエコー写真をバッグにしまい、麻里の元へと歩を進めた。
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