対峙

6/8
222人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「あれ、診察まだですか?」 「ううん、今日は先生とお話しただけだから、もう終わって会計も済んだの」 「あ、そうなんですか」 「どう? 順調だった?」 隣に腰を下ろした佳奈子に、麻里は笑顔でそう聞いてきた。 佳奈子ははにかみながら頷く。 「………はい、順調でした」 「そう。よかった」 相変わらず人懐こく、麻里はニコッと笑顔になった。 「高橋さんは?」 「うちも順調よ。───それより、朝日奈さん」 何か気持ちが急いているのか、麻里はすぐに話題を変えようとした。 佳奈子はキョトンと麻里の顔に見入る。 「はい?」 「今から少し、時間ある?」 「…………え?」 唐突な質問に、佳奈子は戸惑って麻里を見つめ返した。 それが伝わったのか、麻里はあ、ごめんなさい、と手を横に振った。 「急でびっくりするわよね、ごめんなさい」 「え。……いえ」 「あのね、実は私の友達がベビー用品やマタニティー用品を扱うお店で働いてるの。……そういうのって、もう揃え始めてる?」 「いえ、まだ全然」 「実は今度の土曜日に大きなセールやるらしくてハガキが届いたんだけど、私、その日用事で行けなくて」 饒舌に喋る麻里の顔を、佳奈子はボンヤリと見つめるしかなかった。  
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!