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「あれ、診察まだですか?」
「ううん、今日は先生とお話しただけだから、もう終わって会計も済んだの」
「あ、そうなんですか」
「どう? 順調だった?」
隣に腰を下ろした佳奈子に、麻里は笑顔でそう聞いてきた。
佳奈子ははにかみながら頷く。
「………はい、順調でした」
「そう。よかった」
相変わらず人懐こく、麻里はニコッと笑顔になった。
「高橋さんは?」
「うちも順調よ。───それより、朝日奈さん」
何か気持ちが急いているのか、麻里はすぐに話題を変えようとした。
佳奈子はキョトンと麻里の顔に見入る。
「はい?」
「今から少し、時間ある?」
「…………え?」
唐突な質問に、佳奈子は戸惑って麻里を見つめ返した。
それが伝わったのか、麻里はあ、ごめんなさい、と手を横に振った。
「急でびっくりするわよね、ごめんなさい」
「え。……いえ」
「あのね、実は私の友達がベビー用品やマタニティー用品を扱うお店で働いてるの。……そういうのって、もう揃え始めてる?」
「いえ、まだ全然」
「実は今度の土曜日に大きなセールやるらしくてハガキが届いたんだけど、私、その日用事で行けなくて」
饒舌に喋る麻里の顔を、佳奈子はボンヤリと見つめるしかなかった。
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