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麻里はグイッと佳奈子に詰め寄った。
「私のマンション、すぐそこなの。だから、ハガキ取りに来てもらうかわりにお茶ぐらい出すわ」
「えっ、でも、そんな……」
「いいの、遠慮しないで。朝にタルト焼いたところで、ちょうど誰かに食べてほしいなって思ってたところだし」
「……………」
佳奈子は壁にかけられた時計に無意識に視線を走らせた。
時刻は、2時を回った頃。
夜には検診の報告も兼ねて、楓と会うことになっている。
(ちょっとぐらいなら大丈夫、よね。ハガキだけ貰って帰るのも愛想ないし……)
何より、初対面の壁なく親しげに話してくれる麻里には親近感を覚えていた。
境遇もよく似ているし、これから何かあれば、お互いに力になれることが出てくるかもしれない。
意を決して、佳奈子は麻里の家に行くことを決めた。
ペコリ、と軽くその場で頭を下げる。
「それじゃあ……図々しいですけど、お邪魔させていただきます」
そう言って顔を上げると。
麻里は嬉しそうに、ニッコリと微笑んだ。
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