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『え~、でもさ~、妊娠中だったらそんなドレスも可愛いの選べないんじゃない?』
「そうでもないよ。10月の始めだからまだ3ヶ月ちょいだし、それぐらいだとお腹もまだ出ないみたいだし。──元々ガリガリだしね」
細すぎて色気のない体がコンプレックスの佳奈子は自虐の意味を込めてそう言ったのだが、どうやら理香はカチンときたらしい。
電話の向こうで、フンと鼻でせせら笑うような声が聞こえた。
『だよねぇ。佳奈子は昔っからナイスバディだもんねぇ』
「……………」
(あーもー、メンドクサイな)
結局、佳奈子が何を言ってもこの女は気に入らないらしい。
佳奈子は瞑目しながら、肩をすくめた。
「そんなことないよ。細いだけで胸もないし」
『え~、佳奈子ならどんなドレスでも似合うって~』
空々しい言葉にさすがに限界を覚え、佳奈子は早々にこの不毛な会話を打ち切ろうとした。
………胸がムカムカしているのは、決してつわりのせいだけではないだろう。
「……じゃあ、近々招待状、送らせてもらうから……」
『あ、待って待って!』
さっさと電話を切ろうとした佳奈子の思惑は、制止する理香の声であっけなく打ち砕かれてしまった。
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