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『ねぇねぇ。それで佳奈子は新婚旅行、何処に行くの?』
「……………」
佳奈子はぐっと言葉に詰まる。
それは、佳奈子が今一番聞かれたくない質問だった。
やはり佳奈子も年頃の女なのだから、それなりに結婚に対する理想はあって。
その中でも、新婚旅行はイタリアに行きたい、というのが長年の夢だった。
それを知っていたせいかどうかはわからないが、理香は当て付けのようにイタリアを含むヨーロッパ旅行へ10日間も行ってきたあげく、大した土産もなく自慢話ばかりを佳奈子に聞かせていたのだ。
「………お腹、の赤ちゃんが心配だから、飛行機は乗れないねってことになって……。多分、国内の何処かになると思う……」
『ええっ、国内!?』
わざとらしく驚いたような声が返ってきて、さすがにこの時は佳奈子も悔しさで唇を噛みしめた。
『新婚旅行って一生に一度なんだよ? 子供産まれたら海外なんてなかなか行けないのに。国内とかあり得ないわ~』
「……………」
『あ~、私マジでデキ婚じゃなくてよかった~』
それで理香は勝ったと思ったのか、その後適当な話を一方的に喋ったあげく、じゃあね~、と満足そうな声を残して電話を切った。
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