エレベーター

　ぎくしゃくとしか動かない足を、いつもはくそ長いのに、今はやたら短く感じられる開閉時間内にどうにか扉の外へ出す。
　背後で扉が閉まる。エントランスに洩れ出ていた中の明かりが完全に消える。そして、ゆっくりと上に向かって動き出した。
　どっと安堵感が込み上げ、俺は周りに誰もいないのをいいことに、その場にべたりと尻もちをついた。そんな俺の傍らで、エレベーター呼び出しのランプが灯った…。

＊　＊　＊

　あの日以来、ダイエットのつもりはないが、マンションにおける階段の上り下りが俺の日課となっている。
　だけどさすがに疲れるから、いい物件があったらすぐに引っ越そうと決めている。当然だが部屋は探している最中だ。
　急な引っ越し話だから贅沢は言わない。立地や間取りはかなり妥協するつもりだ。
　でも一つだけ。エレベーターに見えない住人(？)が大量に乗り込む所だけは勘弁してくれ。

エレベーター…完