第1章

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「真希。祐里。この後暇? 遊ばない?」 授業が終わると、穂花が誘ってきました。3人で帰るのはいつものことだし、寄り道をするのもよくあることでした。 「いいよ。どこ行く?」 そう言いながら立ち上がった時、チャリンという音が聞こえました。 「また鳴らしてる。そんなに強調するなら何か奢ってよ」 祐里が口を尖らせます。 「またって何? 真希今日お金いっぱい持ってるの?」 朝の話を聞いていなかった穂花が不思議そうな顔をしました。 「違うよ。ちょっと拾っただけ」 ポケットに手を入れて、100円玉を掴んだ時、違和感がありました。慌てて見てみると、手のひらには4枚の100円玉がありました。 「え、なんで」 声に出したのは祐里のほうが先でした。 「どうかしたの」 穂花は私と祐里の顔を交互に見ました。 「朝にはね、2枚しかなかったの」 だよね、と祐里は目で私に同意を求めます。 「うん。拾ったのは1枚だけだし」 穂花は眉間にシワを寄せました。 「100円玉が増えたって言いたいの?」 私と祐里は顔を見合わせます。 「信じたくはないけどね」 先に口を開いたのは祐里でした。 「……気持ち悪」 私は手のひらの上のそれを床に叩きつけました。 「 嘘……」 穂花が目を見開きます。床に目を遣ると、どう考えても5枚以上の100円玉がありました。 しばらく沈黙が続きました。その後、最初に口を開いたのは祐里です。 「……これって、使えるのかな」 祐里が100円玉を拾い始めました。穂花も後に続きます。 「試してみようよ。私ね、今ドーナツが食べたい気分」 ちょうどその時、穂花お腹から音がしました。私は思わず吹き出してしまい、同時に空気が軽くなったのです。 「じゃあ、行こう。駅前のドーナツ屋さんへ」 気がつくとそんな言葉を発していました。祐里は穂花に目配せした後にやりと笑い、 「真希の奢りだってさ」 と言って穂花の手を引き、走り出しました。 拾った100円玉をポケットに入れ、チャリン、チャリンと音を鳴らしながら穂花と祐里を追いかけました。 *
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