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「真希。祐里。この後暇? 遊ばない?」
授業が終わると、穂花が誘ってきました。3人で帰るのはいつものことだし、寄り道をするのもよくあることでした。
「いいよ。どこ行く?」
そう言いながら立ち上がった時、チャリンという音が聞こえました。
「また鳴らしてる。そんなに強調するなら何か奢ってよ」
祐里が口を尖らせます。
「またって何? 真希今日お金いっぱい持ってるの?」
朝の話を聞いていなかった穂花が不思議そうな顔をしました。
「違うよ。ちょっと拾っただけ」
ポケットに手を入れて、100円玉を掴んだ時、違和感がありました。慌てて見てみると、手のひらには4枚の100円玉がありました。
「え、なんで」
声に出したのは祐里のほうが先でした。
「どうかしたの」
穂花は私と祐里の顔を交互に見ました。
「朝にはね、2枚しかなかったの」
だよね、と祐里は目で私に同意を求めます。
「うん。拾ったのは1枚だけだし」
穂花は眉間にシワを寄せました。
「100円玉が増えたって言いたいの?」
私と祐里は顔を見合わせます。
「信じたくはないけどね」
先に口を開いたのは祐里でした。
「……気持ち悪」
私は手のひらの上のそれを床に叩きつけました。
「 嘘……」
穂花が目を見開きます。床に目を遣ると、どう考えても5枚以上の100円玉がありました。
しばらく沈黙が続きました。その後、最初に口を開いたのは祐里です。
「……これって、使えるのかな」
祐里が100円玉を拾い始めました。穂花も後に続きます。
「試してみようよ。私ね、今ドーナツが食べたい気分」
ちょうどその時、穂花お腹から音がしました。私は思わず吹き出してしまい、同時に空気が軽くなったのです。
「じゃあ、行こう。駅前のドーナツ屋さんへ」
気がつくとそんな言葉を発していました。祐里は穂花に目配せした後にやりと笑い、
「真希の奢りだってさ」
と言って穂花の手を引き、走り出しました。
拾った100円玉をポケットに入れ、チャリン、チャリンと音を鳴らしながら穂花と祐里を追いかけました。
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