0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
1
地獄の門へは、決して近づくな。
十二歳になって、初めて狩猟のメンバーに加えられたとき、わたしとローラは、何度も言い聞かされた。それまで、わたしたちはそれがいったいなんなのか、知りもしなかった。
森の奥深くに、直径三十メートルの大穴があるのだ。穴の底には、恐ろしい魔物が潜み、夜になると穴から這い出してきて、獲物を求めてあたりを彷徨う。村の大人はみな、それを恐れていた。
二人で狩りをするようになって数ヶ月後。村への帰り道に、わたしたちはトロールに襲われた。
森の中を全力で逃げ回るうちに、元いた場所へ戻れなくなってしまった。生い茂る草木を掻き分けて進んだ先に、地面を穿つ暗闇があった。
気づけば周囲も暗くなっている。背後には巨人の唸り声。
「もう、死んじゃうのかな……」
恐怖に耐えきれず、そんな言葉がこぼれ出した。
「なに言ってるの、ナタリア!」
ローラが激しい口調で私を叱りつけた。驚いて振り返ると、彼女は笑っていた。
「あはははっ! あなたって面白いわね」
「何がおかしいの、ローラ?」
「だってあなた、もう死んでるじゃない」
そしてローラはわたしを思い切り突き飛ばした。慌てて後ずさろうとしたら、足元には踏みつけるものがなにもなかった。
奈落に落とされたわたしは、そこで意識が暗転した。
最初のコメントを投稿しよう!