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シコツ村
かすかな音。耳を澄ましてこの音を聞くのが好き。ちゃんと刻まれているリズム。気持ちが安らぐ。みんなもそう。生命の音。
リンはエイッと起き上がった。明るい空にうす紫色の雲がたなびいていた。空までつづくゆるやかな丘にてんてんと散らばった牛が首をたれていた。雪が消えて何日もたっている。草を食んでいる牛たちにも穏やかな春の日がつづいていた。
時計を見たリンは少しあわてた。パジャマを着替えると階段を駆け下りる。食堂のドアを開けた。
テーブルの上に朝食がおいてあった。「早く食べなさい。お寝坊さんね」と《ママ》の人差し指がリンのおでこをこづいた。《パパ》はもうでかけたようだ。
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