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日が沈んで暗くなった理科室。
僕は一人で山田がやってくるのを
息を殺してジッと待つ……
他の人間を驚かしちゃダメだ!
そう、泣かすのは山田だけ――
山田はどんな顔して泣くのだろう。
ああ、そう想像するだけで
自然に笑がこみ上げてくる。
「フフ、フフフフッ……――ッ!」
(カツーン、カツーンッ!)
――ヤバい、見回りの先生か?
廊下を歩く足音を聞いて
僕は慌てて笑声をかみ殺す。
(カツーン、……ガラガラッ!)
「オイ、誰だー! 誰かそこにいるのかー!?」
僕はジッと息を潜める……
ドクン、ドクンと心臓が大きく脈打つ
止まれ、止まれ、止まれ、止まれっ!
ここで先生にバレるわけには行かない……
僕は山田を驚かせなくちゃいけないんだ!
「んー? 気のせいか……とみせかけて、コラー!」
「(グッ、ン――――ッッ!!)」
「………………」
「………………」
「うーん、何だ、やっぱり気のせいか……」
(ガラガラ、……カツーン、カツーンッ!)
足音が遠ざかっていく……
フー、危なかった!
深呼吸、深呼吸……
僕は必至で止めていた息を吐き出すと
再び大きく息を吸い込み肺を膨らます
そしてまた大きく息を吐き出す。
それを数回繰り返して気を落ち着かせる。
先生の見回りが過ぎた。
そろそろ山田もやって来る頃合いだろう。
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