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結局、その後も雨は止まずにその日の部活動は中止となった。
同じサッカー部に所属していた僕とA君とB君はやや小降りとなった雨の中を帰宅する為に一緒に学校を出た。3人とも置き傘を用意していなかったのでやや駆け足での下校である。
学校の校門を抜けて左折、そのまま道なりに走って十字路へ、この十字路でA君は真っ直ぐに直進。僕とB君は右へと曲がるのが帰宅ルート。今日は雨なので寄り道して遊んで帰ったりなどはしない。よってここでA君とはお別れである。
じゃあ、また明日な――
そう僕がA君に声をかけようとしたその瞬間。僕たちは十字路の左から現れたその『雨合羽』に声をかけられたのである。
「キミたちはそこの学校の学生かい?」
一体何なのだろう?
僕たち3人は足を止めてその『雨合羽』の質問に答える。
「はい、そうっすけど……」
その質問に答えたのは確か一番後ろを走っていたB君だったはずだ。僕は既に十字路を右折しかけており、A君も直進しかけていた。十字路の左から突然姿を現した『雨合羽』に一番距離が近かったB君が自然とその質問に答える。
「キミたち学校は楽しい?」
『雨合羽』の質問は要領を得ず、良く分からないものだった。必然、僕たちの答えも曖昧となる。この時、確認はできなかったがおそらくA君もB君もきっとこいつを不審者だと感じて少し警戒していたはずだ。
僕たちの誰が発したかも覚えていない「ええ、まあ……」といった曖昧な返答を聞くと『雨合羽』はニヤリと笑った――ような気がした。
「ああ、ならば明日のお昼は教室でジッとしていなさい。
キミたち……
人殺しにはなりたくないだろう?」
そんな不吉な言葉を残して『雨合羽』は道を引き返して行った。正直、意味が分からず僕はただただ薄気味が悪かった。
「はぁ……何だアイツ?」
『雨合羽』の一番近くで返答をしていたB君は少し苛立った様子だった。
変質者なら学校に戻って先生に連絡しておいた方が良いのかな?
少しそう思いはしたが、その『雨合羽』が姿を消した瞬間、また急に雨が強く降り出した為、僕たちは慌ててそのまま急ぎ足で帰路につくことになったのだ。
◇
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