夏目殺人帳

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「今夜は……月が綺麗ですね」  僕は夜空を見上げながらそう口にする。そして彼女にそっと視線を向けると……そう、彼女は照れ笑いを浮かべてこう答えるのだ。 「……ええ、死んでもいいわ」  ――ああ、よかった。 「うん、じゃあ、死んで♪」  僕は背後に隠し持っていた大型のサバイバルナイフを横に薙ぎ払うと彼女の喉元を素早く掻っ切る。  彼女は何が起こったのか理解できないままその瞳を大きく見開き、血飛沫を上げてその場に倒れた。 「ふふ、ふふふふ……」  足元には彼女の流した血の海がどんどん広がっていく。  僕はその血の海を靴を汚れることも気にせず、倒れた彼女に歩み寄るとその頭部を思いっきり踏みつける。  そう、何度も、何度も……  強く、強く、踏みつける!  その度に彼女の血が飛び散り靴やズボン、顔までも汚すが……ああ、それがまた堪らなく気持ちいいーーーーっ!! 「ふはっ、ふはははははっ! このバカ女が! 良いかぁ、テメーが『死んでもいいわ』って言ったんだからな! この僕のようなイケメンに殺されてさぞテメーも満足だろう? はははははっ、何せテメーが自分からそう言ったんだからなぁ!」  『月が綺麗ですね』  『死んでもいいわ』  ――そうこれはあまりに有名な話。  その昔、夏目漱石という頭のイカれた小説家が『I love you(あなたを愛しています)』のことを戸田奈津子ばりのアホな誤訳をぶちかまして『月が綺麗ですね』などと言ったのが全ての始まり。  そしてその告白に対しての『Yes』がなんか良く分からねーが『死んでもいいわ』となるみてーだ。  はははっ、全くバカみてーな話だろ?  そう、僕はこうしたロマンチストに酔ったバカな女が大嫌いなのだ。ああ、しかもこの女はろくな女ではない!  僕の他に付き合っている男が既に4人!  さらにキープしている男は10人以上!  ヒデーだろ、まさに男の敵!  ――こういう女はマジで死んだ方が良い。  そう僕の名前は『夏目雄二(なつめゆうじ)』  この美形を武器に世に蔓延る糞女どもを駆逐する。昨今、世間を賑わせている殺人鬼(シリアルキラー)である。
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