4人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
ちょっと待てよ、それにしてもこの町は静か過ぎやしないか。
こんなに大音量の警告音が鳴り響いているというのに、誰も文句ひとつ言わずにいる。
というか人の気配がないような。
周りは住宅街。青い空に白い雲。電線には雀が三羽。
気持ちいいそよ風が首筋を撫でていく。
どこにでもある風景だ。なのに、人の姿がない。なぜだ?
あれ、俺は何か大切なことを忘れてはしないだろうか。
ここは……どこだったろうか?
あれ? 目が……。
どうしたことだ、景色が揺れている。なぜだ?
眩暈かと思ったのだが、そうではない。完全に景色が乱れて歪んでしまっている。
電波妨害されて映像が乱れてしまったときと似ている。
だが、これは映像ではない。
俺が見ている景色だ。この目で直に見ている景色だ。
俺の目がおかしくなっちまったってことか?
どんどん景色が乱れていき、黒い渦のようなものが見え始めていた。
おかしくなったのは目だけじゃない。
耳もキーンと鳴って気が狂いそうになる。頭が割れそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!