Act.32 Side Hazuki

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「会社では映見がこんな表情を見せることなんて絶対ないでしょ?」 「…………」 「部長だって同じだと思うんですよ。 会社でしか見せない表情もあれば、葉月さんにしか見せない楠田歩が絶対いるはずです。 それに気づけないのは葉月さんが、”楠田部長”しか見てなくて、”楠田歩”として見ていないからじゃないですか?」 「…………」 「だいたい呼び方なんていちいち相手の許可とか必要ですか? 葉月さんが”部長”じゃなくて”歩”って呼びたいなら、勝手に呼んでいいと俺は思いますけど?」 「……そうなのかな?」 首を傾げた私に映見が笑って頷く。 「だって蓮都だって、勝手に私のこと映見って呼び捨てしてたよ」 ……それは瀬那川蓮都だから出来る芸当だと私は思うけど。 「でもさ、冴子さんのことは葉月が無理する必要はないと私も思う。 自分だけが蚊帳の外に出るなんてことはしちゃダメだよ。 今までだって部長は葉月とたくさんの壁を一緒に乗り越えてくれたんじゃないの?」 「……う……」
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