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……そう。
これが都市伝説的に語られている、
「願いの叶う箱」なのだ。
手に入れたのはほんとに偶然
……だと思う。
毎日、無言のプレッシャーと、
金の工面に疲れていた俺は深夜、
もういっそ、
逃亡してしまおうかとか
考えながら帰宅していた。
いつものように高架下にさしかかると
……見慣れない、灯り。
俺の足はふらふらと、
誘蛾灯に向かう我のように
そこへと導かれていた。
テーブルに置かれた、
ぼんやりとした灯りのむこうに、
座っていたのは三十前後の女。
……しかも、かなりの美人。
その前に立ち尽くしていた俺に彼女は、
座るように手で示した。
なんとなく座ったものの、
彼女は一言も話さない。
ただ口元にだけ微妙な笑みをたたえ、
俺のことを見つめている。
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