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「最初は、欲しい自転車買うのに、
ほんの少しだけ金が足りなくて。
借りるだけだ、
すぐに返すからって自分に言い訳して。
でも、誰にもバレなかったもんだから、
また、次、友達と海外旅行に行くのに。
それでもバレなかったから、
次、次、って。
回数も増えていったし、
額も大きくなっていって。
気が付いたら三百万円になってた」
「……」
一度話し出すと、
なぜか口が止まらなかった。
こんなにも俺、
誰かに聞いてもらいたかったんだ。
「我に返って、
こんなんじゃいけないって。
少しずつでいいから
返していこうって思った矢先。
……バレたんです、あいつに」
……あの日のことは。
いまでも今日のことのように
思い出せる。
嫌らしく笑ったあいつ
……村坂に肩を叩かれ、
「おまえの秘密、知ってるよ」
そう囁かれた。
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