6/13
前へ
/13ページ
次へ
「最初は、欲しい自転車買うのに、 ほんの少しだけ金が足りなくて。 借りるだけだ、 すぐに返すからって自分に言い訳して。 でも、誰にもバレなかったもんだから、 また、次、友達と海外旅行に行くのに。 それでもバレなかったから、 次、次、って。 回数も増えていったし、 額も大きくなっていって。 気が付いたら三百万円になってた」 「……」   一度話し出すと、 なぜか口が止まらなかった。 こんなにも俺、 誰かに聞いてもらいたかったんだ。 「我に返って、 こんなんじゃいけないって。 少しずつでいいから 返していこうって思った矢先。 ……バレたんです、あいつに」   ……あの日のことは。 いまでも今日のことのように 思い出せる。 嫌らしく笑ったあいつ ……村坂に肩を叩かれ、 「おまえの秘密、知ってるよ」 そう囁かれた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加