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「……」   不意に、彼女が俺の手を取った。 その上に小さな箱を載せると、 静かに頷く。 「これ、は?」 「……」   やはり返事はない。 けれど、 なぜかこれが例の箱だと気が付いた。 彼女がもう一度頷くと灯りが消え、 ……俺は外灯だけが照らす 薄暗がりの中、ひとり立っていた。 ……えっ!?あれ!? 俺、立ったまま夢でも見てたのか!? しかし、手の中には先程渡された箱。 釈然としないまま、帰路についた。   ……いま俺の目の前にある、箱。 願いが叶う、箱。 俺は一体、なにを願う? 使い込んだ額を補填できるだけの金? ……いくら補填したところで。 村坂からの要求が止まるとは思えない。
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