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第二章
流れ星を後ろに控えさせ、前から3番目の席に座る。後ろの男の机が潰れてしまったけど仕方無いね。ね?
学校に出ても憂鬱なだけだ。ろくなことしない。話題もない。いつもなら。
「よお、館山、なんだ?流れ星拾ったのか?」
ある男が教室に入ってきたと思ったら、俺に一直線に向かってきた。まぁ、なんの特別な存在でもなくイレギュラーでもない。ただの友達、軽井沢。軽井沢とはいつもならゲームの話、マンガの話とかをする。いつもなら。
「まあ、な。いいだろう?」
俺は、流れ星型カップ麺を撫でながら、ニヤニヤした顔で言った。
「そりゃあ、羨ましいわ。俺もほしいなー流れ星。俺の姉貴が持ってるんだけどさ、いつもその話題を出す度に、お前みたいに威張ってくるんだよ。…学校じゃ猫被ってるくせにな」
軽井沢の姉はこの学校の生徒会長をやっていて、弓道部のエースで、成績もトップクラス、まさに文武両道というわけだ。学校では清楚系を貫き通しているが、彼の言い分によると、家では高笑いするタイプらしい。
「それは、済まんかったな」
「いやいや別に謝れって言った訳じゃないから。で、何願ったん?」
「カップ麺」
「は?」
「だからカップ麺」
「…お前らしいな。何だか安心したよ」
「おい、どういう意味だよそれ」
「どうって意味もねえよ。俺だったら、金髪美少女ロリとかスク水幼女盛り合わせとか頼むのになー、じゃあ館山あばよ」
「おい!まて、この!…ん?」
俺は手をヒラヒラさせて去ろうとする軽井沢の肩を掴もうとすると、不意に服が引っ張られた感覚を感じた。ふと、後ろを振り替えると、一人の少女がいた。少女は胸回りに緑色の流れ星を抱えている。
「…那珂湊さん?」
「…話が…あるの…。聞いて…」
この少女、名前は那珂湊という。物静かでいつもクラスの隅っこで本を読んでいる。話術が得意じゃないのか、もの優しげな口調で弱々しく語る。男子のなかではクーデレ的存在で、その存在を尊重してきたはずだ。彼女の周囲をDQNで囲い、怯えさせることでその存在を確かにするという非道的扱いを受けていたはずだ。
閑話休題。
非行動的と思っていた少女が、あり得ないほどの握力で俺の手首を掴み、教室から連れ出した。その衝撃で俺の脳内が混乱する。群がることしかできない鰯がいきなり鮫に進化した感じだ。
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