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手術は無事終了した。肺ガンだったが、幸い発見が早かったためにガン細胞は完璧に取り除くことができたようだ。これも危機察知機のおかげだ。そう。家の中で唯一確認していなかった場所とは、私の体の中だったのだ。
私は病院のベッドの上で、命の恩人ともいうべきその道具を撫でまわした。
手術は成功したのだからもう私の身に危険が迫っていることもないだろう。私はそう考えてその道具を手首に巻いた。
その途端、それはけたたましく鳴り始めた。
病院という場所柄、警報を鳴らしっぱなしにするわけにもいかず、慌ててそれを手首から外す。
まさかガン細胞がどこかに転移していたのだろうか?それなら医師にはやく相談しなければ……と思った矢先、病室の扉がノックされた。私が返事をすると、執刀医が入ってきた。
「ちょうど良かった。今……」
相談したいことがあったのです。そう言おうとした私は言葉を飲み込んだ。なぜなら、執刀医に続いてその後ろから、外科部長、さらには病院長までが姿を現したからだ。
彼らは私の前で一列に並ぶと、一斉に頭を下げた。
「申し訳ございません。手術中の確認ミスで、鉗子をあなたの体の中に置き忘れてしまったようです……」
危機察知機、すばらしい性能だ。
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