第1章

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 久しぶりの外食に妻は上機嫌だった。テーブルには次々と料理が運ばれてくる。  テーブルの端には一見携帯電話と思しき道具があった。もちろんそれは、僕が置いた例の道具だ。  料理が運ばれてくるたび、僕は食材の一部をナイフで切り取り、その道具にある小さなくぼみに置いてみる。  うん。間違いない。さすがは超がつくほどの高級レストランだ。偽装食材が使われているのではないかと疑った自分が恥ずかしい……と、思い始めた矢先のことだ。小さな液晶画面に『フィリピン産ブラックタイガー』の文字が浮かび上がった。  この料理名を詳しく覚えてはいないが、それでもメニューに書かれていたその中には確か『車海老』の文字があったはず。ウェイターも皿を置きながらそう言っていたことを思い出す。  なんてことだ。やはり表に出ないだけで、こっそりとまだこんなことをやっていたのか。  僕は呆れ果てるとともに、これは文句のひとつでも言ってやらねばと思い、ウェイターの姿を探す。  
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