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僕は初めて書いたエッセイ集の一番最初に、「ブルース・ブラウン」という映画監督のこと、そして彼のドキュメンタリー・フィルム“ON ANY SUNDAY”―邦題「栄光のライダー」―のことを書いた。
その映画のパンフレットには、彼の出世作は、“ENDLESS SUMMER”というサーフ・ムービーだということが書いてあったはずだ。
僕は「サーフィン」に大いに興味があった。でもあの頃は、夏でもサーフィンをやっている人など、ほとんどいなかったと思う。
…今では北関東のメッカとなっているビーチ。波さえあれば、一年中いつでも、必ず誰か海に入っている所。
…そこに高校生の頃、家から数時間、せっせとペダルを漕いで、わざわざ冬の海を見に行ったりもした。
でもそこには、閑散として、ただ荒涼たる空間が広がっているだけだった。そんな時代だった。
それから数年。ちょうど僕が大学生になった頃、サーフィン・ブームが到来した。
サーフィンをやる奴もやらない奴も、サーフ・ファッションに身を包み、「オカ・サーファー」や「サーファー・ギャル」なんて言葉も、あのころ登場したのだと思う。
同級生の女の子の中には、今の「ガングロ」「ヤマンバ」の元祖みたいに、日焼けをしたような茶色のファンデーションを首まで塗っている子もいた。
僕は「サーフィン」に大いに興味があった。学校やバイト先でサーフィンをやっている奴もいたが、「バイク命」だったあの頃の僕は、ちょうどモトクロス・レースを始めた頃でもあり、金銭的にも時間的にも、他の遊びをやっている余裕はなかった。
それに、ひとつのことに夢中になると、他のものに目がいかなくなり、トコトンのめり込むタイプ。
『機会があれば…』と思っているうちに、とても長い時間が過ぎ、僕を取り巻く状況もどんどん変化し、『機会があれば…』と思うことすらなくなっていた。
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